最優秀作品(岡崎商業高校 鈴木望恵扇)

2月 6th, 2013

< 最優秀作品 >

「失敗は成長のもと」

県立岡崎商業高等学校

情報会計科 3年 鈴木望恵扇

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「こんにちは!本日からよろしくお願いします!」
ニカッと笑顔を見せた。そして、緊張による心のバクバクがばれるか心配で、顔を隠すかのように深々と頭をさげた。お辞儀をしている時間はとても長く感じた。頭の中で、
「仕事はうまくこなせるかな。」
「事務所の方々に気に入られるかな。」
そういう考え事がグルグルめぐりまわっていたからである。
私は、課題研究の授業で「会計事務所で実践」という講座を選択した。特定の会計事務所に、長期休業中や定期考査、学校行事を除いた、毎週水曜日の5、6時間目に実習させていただくというものだ。将来、安定した事務職につきたいと考えていたので、社会がどういうものか、自分に合っているか、どういった仕事をしているのかなどを少しでも知るためにこの講座を選んだ。
今日は、その1回目。担当の方から簡潔に説明を受け、事務所の方々の前で自己紹介をした。2時間は驚くほどあっという間に過ぎてしまった。
1回目が終わった。これでよかったのだろうか。今日のことを振り返った結果、わからないことはすぐに確認をとれた。失敗はしなかった。挨拶はきちんとできた。ちゃんと集中できた。私は、初めにしてはうまくできた方だと満足した。
しかし、そう簡単にはいかなかった。回を重ねていくたび、仕事の内容が難しくなっていき、パソコンに入力する際のミスがでてきたのだ。特に、伝票の摘要欄の部分は、会社や個人ごとに入力の仕方がバラバラで、それぞれ決まっている。そのため、よく迷ったり間違えたりした。その度、実習が終わると、
「早く慣れたいな。」
「もっとテキパキスムーズにこなしたいな。」
「どうしたら早く仕事がこなせるのかな。」
焦り、不安の気持ちだけが募っていった。
そんなある日、
「仕事の方はどう?」
「難しいです。だけど頑張ります。」
などと、帰り際に話しをしていると、担当の方が、
「すぐにじゃなくていいんだよ。失敗をたくさんして少しずつ成長してね。大事なのは、成長していくことだから。」私は、ハッとした。何を焦って初めからうまくこなそうとしていたのだろう。できなくて当然じゃないか。答えは簡単だった。少しずつ成長していけばいい。そんな当たり前のことがわからなくなっていた。
「次からは、わからないことを恥ずかしがらずに聞き、あたふたせず、少しずつ成長していこう!」
私は、心の中で決心した。そう思った時、今までモヤモヤして曇っていた私の気持ちが一気に快晴へと変わった。スッキリした。
回を重ねていくと、初めに比べ仕事場の環境にも少しずつ慣れてきて、あれだけ緊張していた私の心も、だいぶほぐれてきた。ある日、いつものようにパソコンに伝票入力をしていた。
「体育祭はもう終わった? 私の息子もね、高校3年生なんだけど、ついこの間高校生活最後の体育祭が終わったんだよ。」
今までの私だったら、
「そうなんですか。私は終わってません。」
と、小さな声で答えていただろう。だが、
「高校3年生?!一緒だ!私の高校はまだ体育祭は終わってません。秋にあるんです。楽しみです。」
初めて、会話という会話らしいやりとりができたと思う。その後も、
「そうなんだ~!息子はね、綱引きにしかでなかったの!全く、笑っちゃうでしょ?」
などと、会話が続いた。そして、自然と笑みがこぼれた。
この頃は、税金に関する資料を拝見させていただいて、少し話しを聞いたり、パソコン入力の際に税金のことも入力するようになった。私は税金について深く考えたことがなかった。むしろ、興味すらなかった。だから、事務所の方から税金について話しを聞いたとき、頭の中に?マークがいっぱい浮かんだ。
「なんだ、この難しい話は。」
「法律?なんのことを言っているんだ。」
と思った。だが、このインターンシップの実習で、税金について教えられるにつれて、
「ああ、私、全然知識ないな~。」
「もっと税金のことを知って、こういう仕事に役立てたい!」
と思うようになっていた。そういう気持ちが芽生えたことが、私の日常生活に少し変化を与えた。今まで見るテレビといったら、ドラマにバラエティー、音楽番組。ニュースなんてもっての外。これっぽっちも見なかった。だが最近は、あれだけ興味がわかなかったニュースを見るようになったのだ。少し大人になった。成長したんだ。母からも、
「何っ?どうしちゃったの?」
なんて言う失礼な言葉をかぶせられた。でもそれは、褒め言葉であって。この成長も、インターンシップのおかげなのである。
もう夏が来て、前半の4か月が終わった。この半分で、これまでに行った仕事内容はもちろん、コミュニケーションの大切さ、仕事への責任感、わからなかったり失敗があってこそ理解して成長していけるんだということを学んだ。
残り後半4か月。そして、なんと、
「よかったら、うちで一緒に働かない?」
と声をかけていただいたから、この恵まれた環境と人々の中で、来年以降働くかもしれない。この実習がいかされる。だから、気を引き締めてたくさんのことを吸収して成長していきたい。