論文優秀作品(春日井商業)

11月 21st, 2011

高校生オリジナルブランドに関する一考察 

-本校のOB活動のレビューと新たなビジネスモデルの提案-

1. はじめに

最近、オリジナルブランド(original brand, OB)という言葉をよく耳にする。OBとは、小売店・卸業者が企画し、独自のブランド(商標)で販売する商品のことである。例として、イオングループのトップバリュー、西友の無印良品、ダイエーのセービングなどが挙げられる。または、OBは、地域独自のOBとしても発展している。例えば、北海道十勝農業では、地産地消地域密着型フードシステムの発展に基づいての農産物、馬鈴薯(ばれいしょ)や小麦など十勝でとれた野菜を使った商品を地域ブランドとして展開している。身近にあるコンビニエンスストアにもその地域企業独自の商品を原料に用いた商品が販売されている。一方、OBは高校生が独自に創作する活動へも変化を遂げており、全国の高等学校が活動を行っている。具体的に、コンビニエンストアと共同で、お弁当やスイーツ等の商品を開発・販売する活動や、地元の商工会や商店街等と一体になって実際に店舗を経営する活動がある。

私たちの研究の目的は、社会的に定着しつつあるOBについて、特に高校生OBを対象として、今後の発展可能性を本校のOB活動のレビューと実態調査を用いて明らかにすることにある。

 

2. 本校におけるオリジナルブランドの沿革

(1) OB活動の萌芽

 私たちの高校におけるOB活動の萌芽は、平成元年である。当初の活動は、販売実習として生徒に対しての筆や紙、消しゴム等の校内販売であった。本校の生徒への貢献を目的としており、広く一般社会に対してではなく、校内というコミュニティー内での社会貢献活動であると位置づけることができる。

 OB活動の契機となったのは、平成13年である。これまでの販売実習から地域復興活性化事業に活動の目的を大きくシフトした。具体的に、地元商店街にチャレンジショップの出店を目指した。チャレンジショップとは、商店街の活性化を目的とした空き店舗対策として、地元商工会、商店街振興組合等が空き店舗の一部を店舗開業希望者に期間限定で提供する創業支援事業である。チャレンジショップは、平成15年に現実となる。地元商店街から地域活性化事業の協力要請があり、チャレンジショップ設立が決定した。設立にあたり、①独自のブランド名、②出店日時、を明確にすることからスタートした。ここでの課題は、チャレンジショップの目玉となる取扱商品である。取扱商品は、商業科目の授業においてアンケート調査を実施した。そのアンケート結果に基づき、チャレンジショップの担当生徒は、売れそうな商品、地元に密着した商品等の観点から検討を行い、販売商品を決定した。具体的に、サボテン、飴および一般の方が趣味で作った作品(アクセサリー、帽子、携帯ストラップ・石ころアート等)である。

(2) OB活動の拡充

 平成16年からOB活動は学校祭への参加によって、その活動の領域を広げていった。この活動領域の拡充は、年々広がりを見せ、地元のお祭りやイベントへの参加、および、平成22年には「あいちさんフェスタ」への出店に至っている。本校におけるOB活動の場は年々拡充している。

 一方、活動内容についても、当初の活動内容から年を経るごとに、変化を遂げている。販売商品に関しては、平成17年に、OB活動の目標を「売れる商品を探し出す(・・・・)」とし、市場調査を積極的に取り入れる試みを始めている。その結果として、①既存の販売商品の大幅な見直し、②北海道旭川市の商業高校のOB商品である「旭川ラーメン」の販売、を行った。「旭川ラーメン」は、仕入れ値は値引きを受けたが送料も価格に含まれるため、少々割高ではあったが、味がよかったため、好評であった。「旭川ラーメン」は、現在も本校のOB商品として販売している。

マーケティング分野については、平成18年には、ポスティング(チャレンジショップの日時、場所、商品名などの内容が書かれた手作りチラシを各家庭のポストに入れる活動)を行い、本校のOBの知名度向上を試みた。更に、平成20年には、地元商店街をどうしたら活性化できるかを考え、「商店街にのぼりを立てる」という企画を立て、全校生徒からのぼりに載せるキャッチフレーズの募集を行った。

このようにOB活動は、「売れる商品」から「売れる商品を探し出す(・・・・)」ことへ発展し、市場調査、ポスティング活動およびキャッチフレーズの導入によって、消費者のニーズの把握および知名度向上への試みと活動内容を拡充してきている。

 (3) OBを生み出す試み

 上記から本校のOB活動は、販売実習からチャレンジショップへと変遷している。その中で、市場調査等の売れる商品を探す活動を積極的に取り入れることによって消費者のニーズを把握した上での商品販売を行い、年々売上を増加させてきた。しかしながら、OB活動の本来の目的は、独自のブランドを創造することにある。本校においても独自のブランド商品の開発への試みが平成17年頃から始まった。当初、開発した商品は、①手作り商品(マフラー)、②地元の企業との協力による「オリジナルせんべい」である。平成19年には、市場調査の結果から、新商品をサボテンとした。サボテンを商品のモチーフや商品自体に抜擢した理由は、サボテンが地元の名産品であり、地域に貢献するという気持ちがあったからだという。しかし、飴やサボテンは、当時全く売れなかった。生徒や消費者のニーズを把握することができなかったのが要因である。そこで、様々な工夫が行われた。サボテンのキャラクターの考案やパッケージの加工およびデザイン等に様々な工夫を凝らすことで、売上を伸ばすことに成功した。

 このように本校は、消費者のニーズの把握の重要さを学び、どのようにすれば、商品が売れるのかを商品開発の側面および市場開発の側面からのアプローチを試みている。昨年度(平成21年度)は、地元のイベントへの出展期間中(2日間)において、過去最高となる180,000円の売り上げることができた。

3. 調査概要

 本研究では、本校のおけるOBの将来像を考察するための現状把握として、高校生のOBに対する意識調査を実施した。実施概要は以下の通りである。

(1) 方法・・・アンケートの実施(21問)

(2) 対象・・・本校生徒355名(男子70名 女子285名)

(3) 配布枚数・・・355枚

(4) 調査期間・・・平成23年6月13日~6月17日実施

(5) 回収率・・・99%

4. 実態調査の結果

 図表1は、実態調査の結果を示したものである。

【図表1】

質問内容 調査結果
1 OBと本校のOBを知っているか。【図表2】【図表3】 本校の68%はOBの存在は知っているが、そもそもOBとは何かということを理解していない人が48%であった。
2 NO.1をそれぞれどのようにして知ったか。

【図表4】【図表5】

メディアや宣伝活動からが共に約40%と多い。知人からの口コミは本校OBが35%と比較的高い数値となった。
3 本校のOBの活動内容を知っているか。【図表6】 「ある程度知っている」が52%、「よく知っている」は6%と低い数値となった。
4 NO.3をどのようにして知ったか。【図表7】 「活動の発表を聞いて」という意見が49%おり、「先生・先輩から聞いて」という意見が38%で少なくない。
5 商品を買ったことがあるか。【図表8】【図表9】 一般的なOBも本校のOBも、共に30%であり、OBに対して関心がないという声が多かった。
6 どんな商品を購入したか。

【図表10】【図表11】

一般的なOBでは、「食品」が60%、「雑貨」が26%で割合が高く、本校では全て3分の1ずつ売れている。
7 買ってよかったと思うか。

【図表12】【図表13】

一般的なOBでは、「よかった」が60%、本校では70%と批判的な声はあまり無い。
8 その商品の何がよかったか。【図表14】【図表15】 一般的なOBは、「値段が手ごろ」が47%、本校では、「おいしい」が55%と、違いが明らかになった。
9 その商品の何がよくなかったか。【図表16】【図表17】 一般的なOBは、「使い辛い」が55%、本校の商品は「デザイン性」が37%であった。
10 OBの商品をまた買いたいと思うか。

【図表18】【図表19】

「機会があれば」が一般OB・本校共に約70%、「不満が改善されれば買いたい」が一般OBが3%、本校が6%と不満が改善されも再び買いたいという声は少なかった。
11 本校のOBの商品を選ぶ基準は何か。【図表20】 「おいしい」が60%、「品質」が16%、「デザイン」が10%であった。
12 OBを作り、販売してみたいと思うか。【図表21】 「ぜひやってみたい」が17%と、比較的低い数値となった。これは、№3の結果と関連性があると考えられる。

 

5. 沿革および実態調査を踏まえた考察と提言

 本校のOB活動の沿革および実態調査で明らかになったことは次の通りである。

(1) 沿革

 OB活動の萌芽は、平成元年からの校内における販売実習である。しかし平成15年にその販売実習が現在の形に姿を変えた。目的は、生徒が、商業科目を実践的・統合的に学ぶ実践の場を設けること、生徒の起業家意識を育むことにあった。具体的にマーケティング活動や商品開発等を取り入れることにより、「売れる商品を探し出す(・・・・)」ことを重視したものであった。

 沿革の検討の結果、本校のOB活動は、ユニクロが行っている業態別企画・販売と類似している。ただし、この活動の原型は、ユニクロのビジネスモデルが世間に知られる前である。このビジネスモデルは、企画・立案を行ってそれを別の業者に製造してもらい販売する、提案型の小売業者である。しかしながら、高校生OBの課題として、次の点があげられる。①校外で活動する際の事故の恐れ、②利益を出すことで課税されるかもしれないという恐れ、③課題研究という授業内での活動であるため、利益を出すような活動をしていいのかということ、である。本校のOB活動は、地元の商店街の店舗を使用し、チャレンジショップという形態で活動している。商店街側にとって有益となるものを販売しなければ、商店街および地域の貢献につながらない。そのため、会議を開き、定期的に検討を行っている。高校生OBの知名度の向上について、知名度の向上が難しい背景には、商店街自体の弱体化が進んでいるということが考えられる。商品を買ってもらうためには、商品や活動の存在を知ってもらわなければならない。そこで、地域の祭りでの活動である。沢山の人が集う中、ブースを設け、販売をした。その結果、売上高の増加および知名度の向上の効果が得られている。最終的に地域貢献という目的も達成できた。

(2) 実態調査

 図表1の実態調査の結果から次のことが明らかになった。

第一は、№1~3(図表1)より、本校のOBの認知度は高いが、詳しく活動内容まで知っている生徒の割合が低いとの結果が得られた。このことにおいては、本校のOB活動を定期的に生徒に対して広報活動を行っていくことによって改善できるものと考える。広報活動を実施し、生徒に対してOB活動を積極的にアピールすることにより、№12(図表1)の興味関心の割合が高まると考える。

第二は、OB商品を購入する理由である。№8(図表1)より、購入理由は、価格の安さが第1位であった。これは、一般的なOB商品は価格が他の一般商品と比べて有意である点であると考えられる。本校のOB商品は、価格の面で一般商品のOB商品と同様に低価格を意識した原価管理が必要である。一方で、価格を最優先として考えているが、№8~9(図表1)では、品質等やデザインを重視している傾向があり、低価格のみでは消費者に受け入れられない難しい現状が浮き彫りになった。したがって、低価格を意識しながらもどれだけ付加価値をOB商品に盛り込んでいくかが消費者のニーズを掴む方法であると考えられる。

 上記の実態調査から、生徒を対象とした意識調査では、①価格、②付加価値(デザインおよび味等)、③知名度の向上(広報活動)、を考慮した高校生のOB活動の必要性が明らかになった。

(3) 今後の展望

今後、本校のOB活動を行う上の課題としては、次の4点をあげることができる。(a)コスト、(b)マーケティング戦略の充実、(c)OB提供側の責任、(d)新しいビジネスモデル、である。

(a)、(b)および(c)について、OB商品は従来、低価格を売りに消費者に受け入れられた商品である。本校のOB商品は、一般的なOB商品と比べて割高である。これは、一般企業の大量生産によるコスト削減が高校OB商品には難しい現状であるため、価格面では限界があると考えられる。しかし、日経MJ(2011年7月22日)による最近の調査によれば、消費者はOB商品に対して期待することが価格より品質・機能重視へ変化してきている。つまり、消費者は、価格重視から安全思考やこだわりを反映した付加価値の高い商品にニーズを求めている。このことから、本校OB商品は、上記の消費者ニーズを的確に把握した上で、価格面での欠点を付加価値の高い商品を販売していくことでカバーしていく戦略が必要である。付加価値の高い商品を提供するためには、商品の供給側としての責任が必要である。つまり、エコをキーワードにした活動などから、地球や地域に貢献できるような理念のもとに商品開発を行うことである。したがって、ただ売れる商品を販売するのではなく、このような意思を共有し、今後のOB活動に生かしていくことが必要である。

(d)について、具体的には、自由な取引(フリートレード)の実現である。これは、特定の複数国や地域で、関税を撤廃し、数量の制限や為替管理などの貿易障壁となるものをなくした取引のことである。例として、わが国とA国とが取引をする場合、わが国の商品をA国で販売してもらい、その利益は、すべてA国のものとなる。逆の場合も同様である。これを高校生OBに適用すると次のようなビジネスモデルが考えられる。本校のOB商品である「サボテン」や「オリジナルせんべい」を旭川市の商業高校で販売してもらい、その利益のすべては、旭川の商業高校の利益となる。逆に、旭川の商業高校のOB商品である「旭川ラーメン」を本校において販売を行い、その利益のすべてを本校の売上利益として計上する。このビジネスモデルのメリットは、高校生OBが、従来、地域密着型のビジネスモデルを展開していたのに対して、これを採用することによって、地域から全国へと市場規模をコストをあまりかけずに拡大することができる。さらに、一般の市場をターゲットにしたマーケティングの必要性が生まれ、高校生OBの知名度やOB商品の発展に大きく寄与するものであると考えられる。

6. おわりに

 私たちの研究は、社会的に定着しつつあるOBについて、特に高校生OBを対象として、今後の発展可能性を本校のOB活動のレビューと実態調査を用いて明らかにすることを目的とした。

 本校におけるOB活動の沿革および実態調査から高校生OBに求められる要素として、(a)価格、(b)付加価値、(c)知名度、(d)消費者ニーズの把握(市場調査等)であることが明らかになった。本校のOB活動もこれらの要素を既に取り入れながら活動を行っているが、更なる発展が期待される。

一方、今後の発展可能性について、①適正価格と付加価値のある商品開発、②新たなビジネスモデルとして高校版フリートレード導入による市場規模の拡大路線戦略の必要性、を提言する。

商業高校に通う私たちは専門科目を通じて、実際の社会および経済のしくみについて学んでいる。高校生のOBは、教科書の内容を越えた社会経験を教材として企業経営の意味について学んでいる。実際、私たちは、これまでの活動歴およびアンケート調査に基づく実態分析から、OB活動の重要性と難しさを感じ取ることができた。高校生のOB活動は、日ごろの商業教育の成果を発揮する場であり、消費者教育においても販売員とは逆の立場からさまざまなことを学ぶすばらしい機会であると考える。したがって、高校生のOB活動は、担当する生徒のみならず学校全体で育て発展させる必要があると今回の研究を通じて再確認できたと考えている。

【参考文献】

日本経済新聞(1998年3月28日・2011年6月22日・2011年7月1日)。

日経MJ[流通新聞](2011年5月9日・2011年6月29日・2011年7月22日・2011年7月27日)

2001-2010『校誌 いずみ』一柳印刷,第33巻-第42巻。

相原修,2007『マーケティング入門』日本経済新聞社出版社。

アル・ライズ/ジャック・トラウト共著(新井喜美夫訳)、2004『マーケティング22の法則』東急エージェンシー。

ウェブ版『知恵蔵2011』http://kotobank.jp/ (最終アクセス日 2011年7月22日)

飯山辰之介,2011「消費者参加型の商品開発 消費者は開発パートナー」『日経ビジネス』日経BP社,pp.68-71。