最優秀作品(古知野高校 三輪恭子)

11月 21st, 2011

< 最優秀作品 >

「明日につながる体験」

県立古知野高等学校

情報処理科 3年 三輪 恭子

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私は、高校の三年間で、人間として大きく成長することができました。

そもそも、私が入学した高校は、自分が望んだものではありませんでした。中学三年の秋、愛知県への引っ越しが決まり、母は私に、家から近い商業科のある学校へ進んで欲しいと言い、勧めたのが、今通っている高校なのです。しかし、私は、自分が選んだわけでもない学校で、高校生活を過ごす意味はあるのかなど、とても不安でした。

このようにスタートした高校生活でしたが、思いのほか一年生の時から、順調に進んでいきました。コンピュータ部に入部し、周りの友達よりも早く上位級の資格を取得できました。また、「ビジネス基礎」の授業で、ビジネスマナーを勉強し、秘書検定にも合格出来ました。入学時の後ろ向きな自分が知らない間に前向きな自分に変わりながら二年生に進級していきました。

私達の学校では二年生の夏休みに、全員地元の企業で就業体験をさせていただき、「働くこと」の喜びや厳しさを勉強するという機会があります。

私は、あるホテルへ行きました。ホテルといえば、ビジネスマナーの神髄です。私は、今まで授業で学習し培ったことを確かめたいと考えていました。初めに、座席の優先順位などについての説明を受けました。その中で、幾つかの問いを投げかけられました。そこで、私は誇らしげに答えました。もちろん、答は合っていて、私はそれまでの努力が認められたような気分でした。就業体験なんて余裕だ、授業の延長線だと。しかし、私の考えはすぐに覆りました。ホテルの方が客室に、私たち生徒を案内してくださった時のことです。ホテルの方が先に入り扉を押さえてくださっていました。私はとっさに、失礼のないようにと、扉を押さえるのを代わりました。私は良かれと思ってしたことでしたが、ホテルの方から返ってきたご指導は、私にとって意外なものでした。

「扉を押さえようとしたのは良い心掛けだけど、取手を持たないと、指紋が付くから気をつけてね。」 そう言われ、私はあんぐり口を開けて、暫く何も考えられなくなりました。その扉は、透明のガラスで出来ていたので、言われてみればその通りです。ただ、その時の私はそこまで頭が回りませんでした。

マナーとは、相手を不愉快にさせず、思いやりのある気持ちをもって人と接するものです。私はそれをいつも心がけて行動していました。しかし、今回の体験で社会人として求められる「ビジネスマナー」というものが、それに加え、お客様に対し細心の配慮が必要であること。そして、おもてなしの気持ちをこめて、それを自然に表現できることという、一ランク高いものであることがわかりました。あの時、扉をいち早く押さえなくては、としか思えなかった私はまだまだ甘く、もう少し先の判断をする力が足りなかったことが残念でした。この実習で私は小さな挫折を味わいました。

しかし、私はその一方で、今までしてきた努力は間違いではなかったと確信しました。マナーの基礎は分かっているのだから、あとはそれをもう一段高める努力をすればいいのだと考えることができました。

さて、三年生になり、私は、「出前授業」に参加しました。これは、近隣の中学校へ代表生徒が赴き、ビジネスマナーについて授業をするというものです。そこで、私はもう一つ大きなものを得ることができました。それは、自分の思いを相手に伝える難しさ、そして大切さです。

「出前授業」で私は、自分が出来ることを、精一杯中学生の前でやってみせました。多くの生徒が興味を持って、大きな声でのあいさつや、礼の仕方、電話対応の練習をしてくれました。しかし、中には、気だるい様子で、目を伏せている生徒もいました。その時私は、少しだけ苛立ちを感じました。

ただ、そういった中学生を前にして、昔の自分の姿が映りました。過去の私も、マナーなんてその場しのぎで何とかなる、と思っていました。だから、彼らが今、そういう心境ならば、私の気持ちを伝えることは難しいと感じました。けれど、ほんの少しでも、マナーに関心を持ってもらえるようにと、最後まで笑顔で頑張りました。

高校三年生の私は近い将来社会に出て、様々な年代のお客様や会社の人たちと接していきます。その時に、自分の気持ちをコントロールできず、感情が表に出てしまうことがあってはなりません。また、誠意をもって相手に接すると同時に、こちらの思いを伝えていくことが必要となります。

この学校は私が望んで入学した高校ではありませんでした。しかし、就業体験や出前授業など、この学校だから体験できたことがたくさんありました。もしもそれらの体験がなかったら、マナーについても、ただ教科書を読み、その通りにしか動けない、つまらない人間のままだったと思います。

また、自分の思いを相手に伝えることの大切さや、失敗や挫折から学ぶということもなかったと思います。

「過去は変えられないけれど、それをどう意識するかでその後の生き方は変わる」

ビジネスマナーの交錯しあう社会に、私はこれから足を踏み入れていきます。商業科で学んだ基礎を大切に、様々な場面で気を配りながら、プラス思考で前進していきたいと思っています。